水谷先生に,今まで,直接,恩返しができたのは,水谷本と私が呼んでいる,『日本語教育の過去・現在・未来』の5巻本のうちの2巻の編著で携わったことだと思います。
これらの本は,2009年に出たのですが,そのときの水谷先生のお話は,「30年後でも色あせないものを」でした。しかし,私は,「30年後にはすっかり色あせているものを」と考えました。それは,質のよくない論文集にするということではなく,30年後には,実践や研究が進んで,2009年現在での課題が,30年後の未来にはすっかり克服されていて,そのとき,「30年前の過去には,こんなことが課題とされていたんだ」と思ってもらうということです。
そのため,本では,2009年現在での課題と未来に向けて何をするべきを記しました。「何をするべきか」とすると,水谷先生が嫌いな「べき論」になってしまいます。そこで,私がこれから何をしたいか,そして,何をするかを約束する形で書きました。それから,まだ,5年半がたちました。不本意ながら,ここで,何がどこまでできて,何がどこからできていないかについて,まずは,来年の夏までに,イベントなどで振り返っていきたいと思います。
河野俊之